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お役立ちコラム
子どもの歯並びが気になった時、多くの親は前歯の向きや重なり、すき間、出っ歯、受け口といった見た目に注目します。
もちろん見た目は大切な判断材料ですが、子どもの歯列矯正を考えるなら、歯並びだけを見て判断しない視点も必要です。
舌の位置や飲食物の飲み込み方、口呼吸、唇の閉じ方、食べ方、発音は、いずれも歯並びや噛み合わせと密接に関わっています。
今回は、子どもの舌の位置や使い方、歯並びの関係性について解説します。
歯列は、頬、唇、舌という三方向の力のバランスで成り立っています。
舌が本来より低い位置に落ちていたり、前歯を繰り返し押す癖が続いたりすると、前歯の傾きや噛み合わせに変化が生じる場合があります。
大人に比べて子どもの歯や顎は成長の途中にあるため、強い力でなくても、少しずつ続く力で歯並びに影響が出る時期なのです。
舌の癖は「舌癖」と呼ばれ、見た目ではなかなか気づきづらく、歯科医院で確認して初めて舌癖が見つかることも少なくありません。
また、舌癖は単独で出るとは限りません。
口呼吸や指しゃぶり、爪噛み、頬杖、うつぶせ寝、柔らかい食事に偏った生活など、複数の要素が同時に重なるケースが多くあるのです。
口が開いたままになっている子は、舌が上顎に収まりにくくなります。
逆に、舌が下がっていると唇を閉じる筋肉が使われづらくなり、頬の筋肉の使い方に偏りが生じやすくなります。
指しゃぶりが長く続く子では、前歯が噛み合わない開咬、上の前歯が前へ出る形、口元が閉じづらい状態が見られるかもしれません。
複数の癖が重なっている子どもは、一つひとつを個別に見るより、口元全体の使い方として捉えるとよいでしょう。
そして、舌の使い方や飲み込み方、口呼吸が残ったままだと、歯列矯正をしても治療後に歯並びが安定しにくい状況が起こります。
これは装置で前歯の位置を整えても毎日舌で前歯を押す癖が続けば、歯に余分な力がかかり続けるからであり、小児矯正では「歯を動かすかどうか」だけでなく、「舌がどこにあるか」「鼻で呼吸できているか」「唇を自然に閉じられるか」まで確認します。
舌癖の代表的なものは、前歯を押す癖、飲み込む時に舌が前へ出る癖、上下の歯の間に舌を入れる癖です。
舌で前歯を押す癖が続くと、前歯が前方へ傾きやすくなります。
これは、上の前歯が前へ出る上顎前突(いわゆる出っ歯)、前歯のすき間、口元の閉じにくさと関連することがあります。
見分けるなら、子どもが無意識に舌を前歯へ当てていないか、話す時に舌がチラッと見えないか、食事中に舌で食べ物を押し出すような動きがないかを観察してみてください。
ただし、家庭での観察だけでは判断しきれません。
歯の傾き、顎の幅、唇の力、鼻呼吸の状態などを含めて、歯科で総合的に確認する必要があります。
飲み込む時に舌が上下の前歯の間へ出る癖を舌突出癖と呼び、この癖が続くと、上下の前歯が閉じづらくなる開咬と関係してきます。
開咬があると、前歯で麺類や野菜を噛み切りにくい、サ行やタ行の発音が不明瞭、口を閉じた時に違和感が出るといった悩みにつながります。
「前歯が少し開いているだけ」と軽く見ず、食べ方や発音に影響が出ているかどうかまで確認するとよいでしょう。
舌は本来、上顎側にふわっと収まっている状態が望ましいとされています。
舌が下顎側へ落ちている状態を低位舌と呼び、口呼吸と重なりやすく、この状態が続くと唇を閉じる筋肉が使われにくくなり、口元の筋肉バランスが崩れていきます。
鼻づまり、アレルギー性鼻炎、扁桃肥大、アデノイド増殖といった背景が隠れている可能性もあり、歯科だけでなく耳鼻科での確認が必要になるケースもあるでしょう。
夜に口を開けて寝ている、いびきがある、朝起きると口が乾いている、日中も口が開いているといった様子が見られたら、歯並びより先に呼吸の状態を確認しておきたいところです。
前述したように、上の前歯を舌で押す癖があると前歯が前方へ傾きやすく、上顎前突、いわゆる出っ歯の状態が進む場合があります。
出っ歯は見た目だけの問題ではなく、唇が閉じにくい、前歯をぶつける、口が乾く、発音しづらいといった生活面での悩みにつながることも少なくありません。
舌癖が関係している出っ歯では、歯を動かす矯正治療だけでなく、舌が前歯を押さない使い方を習得するためのアプローチも必要です。
開咬は、奥歯で噛んでも前歯が閉じない状態ですが、指しゃぶりや舌癖、骨格的な要素などが関係することが多いです。
前歯が閉じないと食べ物を前歯で噛み切りにくくなり、発音時に空気が抜けて舌足らずな話し方に聞こえる場合もあります。
子ども本人が不便を感じていないように見えても、食事や会話の場面で負担が出ているかもしれません。

家庭でできる観察は診断ではありませんが、普段の口元、食べ方、話し方、寝ている時の呼吸、唇の閉じ方を見ておくと、受診時に状況を具体的に伝えやすくなります。
気になる様子があれば、写真や短いメモを残しておくと診察時の説明にも役立つでしょう。
テレビを見ている時や勉強中、ゲーム中、寝ている時などに口が開いている時間が長いなら、舌の位置や鼻呼吸の状態を確認したいサインです。
ポカンと口が開いている子は舌が下がっている場合があり、唇を閉じる力が弱い、鼻づまりがある、姿勢が崩れるといった複数の要素が重なっているケースもあります。
まず「口を閉じなさい」と叱るより、なぜ閉じにくいのかを探るのが先です。鼻が詰まっている子に口を閉じるよう求めても、苦しくなるだけで続きません。口が開く背景に何があるかを見てから対応を考えるのがよいでしょう。
食事中にクチャクチャ音が出る、飲み込む時に舌が前へ出る、よく噛まずに丸のみするといった様子も注意が必要です。
食べ方は舌、唇、頬、顎を連動させる動きで、歯並びだけでなく、噛む力、飲み込む力、唇を閉じる力も関係します。
食事のマナーとして注意するだけでなく、機能面の弱さが隠れていないかを見てください。
硬い物を嫌がる、口の中に食べ物をためる、食事に時間がかかるといった様子も受診の目安になります。
舌は発音と深く関わっています。
サ行、タ行、ラ行がはっきりしない、空気が抜けるように聞こえる、舌足らずに聞こえるのも受診の目安の一つです。
特に前歯が開いている、舌がよく見える、口呼吸がある、食べ方も気になるといった複数のサインが重なっているのであれば、小児歯科や矯正歯科で判断してもらいましょう。
必要に応じて言語聴覚士や耳鼻科と連携する場合もあり、歯科だけでなく、子どもの状態に合う専門家へつなげる視点も大切です。

歯並びは舌の位置、口呼吸、食べ方、発音と深く関わっています。
舌癖や口がポカンと開く状態が続くなら、出っ歯や開咬、発音の悩みにつながることがあります。
ただし舌癖や口呼吸があっても、年齢や顎の成長、生活習慣を含めて口元全体で判断し、「即座に歯列矯正が必要」とはなりません。
気になるサインがあれば、早めに小児歯科や矯正歯科へ相談してください。
相談は治療ではなく、現状と選択肢を知る機会だと考えるとよいでしょう。